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第87回研究会


開催日時 2021年8月6日(金) 17:00-19:00
場所 オンライン
発表者
下條尚志氏(神戸大学大学院国際文化学研究科)
タイトル
「国家の「余白」―メコンデルタ 生き残りの社会史」
要旨
本発表は、20世紀後半に国際的紛争と社会主義を経験したベトナム南部メコンデルタにおいて、多民族的かつ混淆的なある地域社会のローカルな歴史を、長期の民族誌的調査に基づき論じるものである。複数の国家が、統計や分類、暴力などを用い、この地域の人々を捕捉しようとしてきた。しかし、民族的宗教的に多様な背景を持った人々の混淆が進み、人やモノの高い移動性がみられる地域では、国家がその実像を十分に把握できないことがある。国家が理念的統治を実現しようとすればするほど、人々との間で齟齬、軋轢が生じ、動乱が拡がる。すると動乱を避けるように、人々は徴兵逃れの場や闇市、越境ルートなど、「国家の介入しにくい空間」を創り出す。メコンデルタ各地ではこの過程が繰り返され、塗り潰しても浮かび上がる白地のように、国家の「余白」が出現してきた。国家の「余白」は、辺境や周縁、ゾミアとは異なる。本発表では、生存をめぐり地域住民が様々なアクターを巻き込み国家と折衝を展開するなかで、ローカルな秩序が半ば偶発的かつ再帰的に紡ぎあげられてきた場として、国家の「余白」を議論する。