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大石 侑香准教授


はじめに

「自然」に対する多様な考え方、「自然」とヒトとの多様なかかわり合いのあり方に関心があります。寒冷な環境で人類がどのように生きてきたかについて、シベリアおよび北極域の人々を対象に、生態人類学や環境人類学、人類史の分野に近い視点と手法で研究しています。

研究内容

具体的には、西シベリア森林帯のハンティと森林ネネツを対象に、狩猟採集、漁撈、トナカイ飼育の生業複合について調査してきました。拙著『シベリア森林の民族誌:漁撈牧畜複合論』(2023年、昭和堂)では、定住性の高い漁撈と移動性の高いトナカイ飼育を同時に営む柔軟な環境利用や、川で捕った魚をトナカイに餌づけするという放牧技術について論じました。なお、これまでの研究の経緯については以下に詳しいです。
「研究者探訪」神戸大学URA学術研究推進室インタビュー記事
https://www.research.kobe-u.ac.jp/gksh-web/ura/research/young_oishi_sensei.html

最近の活動

毛皮の研究

西シベリアの現地調査ではハンティたちは家畜トナカイや野生キツネなどの毛皮を使ってとてもおしゃれに着飾っていました。ヒトと動物との相互関係を毛皮というモノをとおして考えてみたいと思い、下記の研究を進めています。ここ数年は、毛皮動物の家畜化過程について文献研究したり、ロシアや北欧でキツネやミンクの飼育場でフィールドワークしたりしています。

水共生

ロシアの淡水産資源管理のハンティの漁撈への影響について調査しようとしましたが、シベリアへ行くことができない状況が続いているため、代わりに日本でも可能な漁撈道具の研究を進めました。その成果の一部を以下のような展示にしました。

狩猟採集社会の複雑化

河川沿いに比較的定住的に暮らし漁撈を行う北方民族社会の階層化過程ついて研究しています。また、以下の研究助成を得て、河川による社会の分断と結びつきについて他地域との比較共同研究を進めています。
  • 木下記念事業団研究助成「河川環境と人との相互作用に関する地域間比較研究」(代表、2023-2024)

北極環境研究

人類学を閉じたものとせず、自然科学分野と対話し共同研究を推進していきたいと思っています。気候変動等による北極環境変化の社会への影響についての共同研究に参加してきました。院生の頃からこれまで、地球環境学研究所「温暖化するシベリアの自然と人」プロジェクト(2013-2014)、「北極域研究推進プロジェクト:ArCS」(2015-2020)、「北極域研究加速プロジェクト:ArCSII」(2020-2025)などに関わってきました。
現在は、北極先住民と自然科学者とともに、環境に関する課題の共有や生物多様性などのモニタリングを行い(CBM: Community Based Monitoring)、在来知と科学知の統合を図り、コミュニティによる環境管理に関する意思決定(CBD: Community Based Decision making)につなげるといった実践的研究方法や、新しいテーマとしては北極労働移民に関心があります。

雲ノ平サイエンスラボ

また、学術をより広く社会に開き、社会とコミュニケーションしながら、自身の研究を深化させていきたいと思っています。北アルプスの雲ノ平山荘を拠点に、登山者らと様々な分野の研究者とが山岳文化や自然との向き合い方について考える場づくりに参画しています。

大学院教育

北極域(ロシア、北欧、北米など)研究をしたい学生、あるいは北極域以外でも、広くヒトと自然とのかかわりあいに興味のある学生を歓迎します。
知らない場所で知らない人たちのもとで長期フィールドワークを遂行して博士論文を完成させるのは、それなりに覚悟と労力と忍耐が要りますが、恐れずに興味のある物事を探求しましょう。研究を続けていると、楽しくなってきたり、研究せずにはいられなくなったりしてきます。持論ですが、マイナス40℃の気温にもヒトは三日で慣れます。