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岡田 浩樹教授


最近では「自分の研究紹介」にすっかり食傷気味なこともあり(何を今さら・・・)、ここでは若い方に向け、書くことにしましょう。とはいえ、少しは現在の研究についてキィワード的に書くと、「近代、グローバル化による社会・宗教・文化の再編成」をテーマとする。フィールドは日本(岐阜県飛騨地方、神戸・阪神間、南西諸島)、韓国(関連で中国、ベトナム)、ブラジル、そして「宇宙」(最先端科学技術)です。トピックとしては、家族・親族、地域社会とコミュニティ、儀礼と世界観(世界認識)、最先端科学技術といったところでしょうか。
 
専門分野?と問われると、一応「文化人類学者」と応えます。もしかしたら、今でも「民俗学者?」、「社会学?」(かつて宗教社会学の講義をもったことがあります。宗教社会学者の方々ごめんなさい)と言った方が、怪訝な顔を見ずにすみ、面倒な説明をしなくてもいいのですが・・・、以前は文化人類学を始めた時は、「文化人類学って何だ?」という問いに悩んだものです(今も)。その後、大学院修士課程、博士課程を違う大学で過ごし、「文化人類学」を40年間続けて来てしまったことに呆然としています。だが、まあ悪くないです。ここまで続けられたのは、先人の文化人類学者、指導してくださった先生方の「肩」に乗ってきたおかげだと、あらためて思います。

「Dicebat Bernardus Carnotensis nos esse quasi nanos gigantum[注 2] umeris insidentes, ut possimus plura eis et remotiora uidere, non utique proprii uisus acumine, aut eminentia corporis, sed quia in altum subuehimur et extollimur magnitudine gigantea」
(私たちが彼らよりもよく、また遠くまでを見ることができるのは、私たち自身に優れた視力があるからでもなく、ほかの優れた身体的特徴があるからでもなく、ただ彼らの巨大さによって私たちが高く引き上げられているからなのだと。)坂本賢三1984,『ソールズベリーのヨハネス―メタロギコン」,『科学思想史』167-174,岩波書店.
 
今の私がよく、より遠くを見ることができているという自信はまったくありません。それに「現在には現在の権利があること」も事実です。現在流行のトピック、テーマ、理論に関心を持つことは決して悪いことではありません。最先端を作り出している研究者には敬意を持つしかありません。ただ、ちょっと長く続けてきたおかげで、過去に様々な「流行」が消えていったことを知っています。その「流行」の背後にある「縦」(先行研究)、「横」(同自体の人文社会分野の関係)、「斜め」(社会や文化、自然科学系も含めた知)がないと、薄っぺらい一時的な「流行」になってしまいます。若い皆さんに、ぜひ「古典」と現在の他分野の研究に親しむことを勧めます。
 
今、神戸大学の文化人類学は、コースに(梅屋さん、斎藤さん、大石さん、下條さんと私)の5名の人類学者、同じ専攻小野の別コースに1名(深川さん)、それに人類学の関連分野の教員もおり、全国的にも恵まれた教育研究環境です。ただし「肩の上」というのは、大学院も同じです。

その前史は1960年代、助教授としてオセアニア研究者の石川栄吉先生から始まり、教養部での文化人類学を担っておられたのは合田濤先生(東南アジア)、吉岡政徳先生(オセアニア研究)です。両先生に加え、1992年に教養部が国際文化学部に改組され、1993年に須藤健一先生(現堺市博物館館長)が赴任され、現在の神戸大学における大学院文化人類学教育が本格化します。その後、柴田佳子さん、細谷広美さん(現成蹊大学)、土佐佳子さん、少し遅れて岡田が着任しました。ただし、当時は文化人類学コースではなく、いくつかの講座に分散していました。

2007年、改組により、大学院国際文化学研究科が設置されると、伝統あるオセアニア研究については須藤先生が「アジア太平洋文化論コース」に、合田先生、吉岡先生、柴田さん、細谷さんと私が「文化人類学コース」を構成しました。それまでも個々の教員が大学院生を育成していましたが、ようやくコースとしての専門的な指導体制が整ったと言えます。その後、合田先生、須藤先生が退職され、梅屋さん、斎藤さんが着任、また石森大知さん(現法政大学:オセアニア)、窪田幸子さん(現芦屋大学長:オセアニア研究)が在籍されました。

2021年に大石さん、下條さん、深川さんが着任したことで、現在のスタッフの体制となりました。いわゆる「老舗」の大学院に比べると、21世紀の比較的新しい専門コースではあるものの、日本の文化人類学という「巨人」に乗った神戸大学文化人類学コースの歴史という「巨人の肩」に現在のスタッフ、そして大学院生が今も、これからも乗っていくのでしょう。